飲食店の閉店傾向を業態やエリアごとに調査。都心に影響大、変化ない業態も
飲食店・飲食事業のM&A・譲渡のサポートを行っている「飲食M&A by 飲食店.COM」が、2020年に店舗・事業売却を検討された事業者の傾向を調査した。とにく新型コロナウイルス感染症拡大の影響が強い、一都三県(東京都、神奈川県、埼玉県)を中心に、業態や店舗の広さ、階数での閉店相談割合の推移を元に実態をまとめた。
この調査は、「飲食M&A by 飲食店.COM」および、「居抜き情報.COM」へ相談のあった飲食事業・店舗の閉店・売却相談から算出している。調査期間は、20年1月1日~12月31日と前年、19年1月1日~12月31日のデータを比較している。
20年の業態別の閉店相談割合について、前年に比べ居酒屋、カフェ・バー、カラオケ・スナックの3業態の割合が上昇した。居酒屋(前年比6.15%増)、カフェ・バー(前年比4.22%増)は5%前後の上昇がみらる。カラオケ・スナック(前年比2.33%増)は、“3密”防止対策方針や時短営業の影響が及んだほか、クラスターが発生しやすい場所として挙がったことも要因と推察できる。
おひとり様向けの業態は変化なし
前述の3業態と異なり、上述した影響をあまり受けていない業態はラーメン・そば・うどん(前年比マイナス4.7%)、フレンチ・イタリアン・その他洋食(前年比マイナス5.29%)、お弁当、テイクアウト(前年比マイナス2.25%)となった。
ラーメン・そば・うどんなどの業態については「おひとり様」需要が高まっていることもあり、例年に比べ閉店傾向は抑えられているように見られる。また、住宅立地の駅周辺でも、リモート化や、飲み会需要の減少、時差出勤で帰宅時間が早まるなどのきっかけにより、利用機会が増えていることも考えられる
お弁当・テイクアウト業態についてはUber eats(ウーバーイーツ)などのデリバリー系事業の需要拡大や、「おうち時間」確保のためのテイクアウト需要の高まりにより、事業継続しやすい環境が作られてきています。
1階以外、中型・大型店舗の閉店相談割合が上昇傾向
2020年に受けた閉店相談については20坪以上の店舗の閉店相談が多くなるという結果となった。とくに顕著だったのは20~30坪の店舗(前年比8.6%増)と30~50坪の店舗(前年比5.0%増)となり、次いで50坪~80坪の店舗(前年比2.5%増)。
飲食店の場合は業態にもよるが、1坪につき1.5~2席の客席を設けることができる。閉店相談が多くなった店舗の傾向としては、30~50席以上の客席を持つ中規模、大規模な店舗が挙げられ、それに反して10坪~20坪の店舗(前年比マイナス14%)、10坪以下の店舗(前年比マイナス2.7%)となり、小規模店の閉店相談割合は前年に比べて低下するという結果となった。
店舗の階数によっての傾向にも、一定の変化が見られた。
1階の店舗の閉店相談割合が前年に比べ、マイナス13%となり大きく減少傾向となった。他の階層については1階を含まないものはすべて上昇するという結果に。
とくに、3階以上の空中階店舗(前年比7.36%増)と地下1階店舗(前年比6.44%増)の増加率は大きく、前述してきたコロナ禍での集客力低下が大きく影響していると考えられる。
先にご説明した店舗の坪数についてのデータと照らし合わせると「中規模または大規模の1階以外店舗」の閉店相談割合が上昇の傾向にあるということが見受けられる。
これらは、団体客や大人数のグループをメインに集客するような業態の飲食店に多くあてはまり、それらの業態はオフィス立地、商業立地の客数減少も相まって、店舗運営に大きな影響を及ぼしたと考えられる。
都内中心部の閉店相談割合が増加傾向
歌舞伎町がある新宿区も上昇
2020年、東京都内にて運営している飲食店の閉店相談は、前年に比べ、都心3区(千代田区、中央区、港区)、副都心4区(渋谷区、新宿区、豊島区、文京区)の割合が上昇するという結果となった。
その中でも上昇率が大きかったのは渋谷区(前年比8.41%増)、港区(前年比5.68%増)、中央区(前年比3.05%増)だった。
これらに該当するエリアは、区内各駅の中でビジネス立地・商業立地が広範囲を締めており、2020年4月の緊急事態宣言後の各企業のリモートワーク・商業施設、店舗の営業自粛の影響を強く受けていると考えられる。
歌舞伎町などの繁華街が存在する新宿区は前述した3区に次ぐ上昇率となった。
上記の閉店相談割合が上昇したエリアに比べ、23区西部(品川区、目黒区、大田区、世田谷区、中野区、杉並区、練馬区、板橋区、北区)と23区東部(足立区、葛飾区、荒川区、台東区、墨田区、江東区、江戸川区)は下降傾向。
この傾向については、都心3区、副都心4区の閉店相談数の増加によって、他エリアの占有率が低下したことも影響しているが、台東区(前年比3.16%減)、大田区(前年比2.76%減)、江戸川区(前年比2.75%減)、北区(前年比2.74%減)の4区については3%前後の減少率となり、例年よりも閉店相談数自体も減少していると考えられる。
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